AKARI HIGUCHI

2度目に通った声優養成所/新世界編【Story:2】

2度目に通った声優養成所/新世界編【Story:2】

2度目に通った声優養成所/新世界編
【Story:2】

俳協ボイスアクターズスタジオ(第21期)の入所試験。

私の記憶では、軽い自己紹介(1分間ほど)と、渡された紙1枚(原稿?)を読んだように思います。
紙に書かれていたのは、セリフだったかナレーションだったか…
記憶が非常に曖昧なのですが、10~15人ずつくらいをひとまとめにして、端から順に一人づつ
事務的に番が回っていったように思います。
(なにせ10年ほど前の話なものでご容赦を/笑)
↑もし試験内容などを詳しく知りたい方は、ググってみてください。
情報が、それはもう山のように出てきます。

どこの養成所もそうだと思いますが、一番最初の試験というのは、非常に大きな、めっちゃくちゃ大きな、
しかも網目の細か〜〜い「ふるい」のようなものです。
最初の養成所の記事にも書いたことなのですが、こんな、落ちる隙間のほとんどない大きなふるいから
落ちてしまうようではお話になりません(キッパリ)
たった2~3分という非常に短い時間ですが、そこで瞬間的に自分の能力を発揮することができない
という時点でアウトです。
厳しいことを書いていますが、本当のことなのです。
さて、その大きなふるいにしがみつき、めでたく網目の上に残った私は、晴れて
俳協ボイスアクターズの授業を受けることに。
私のクラスの先生は、あの「奥様は魔女」のナレーションでお馴染み、大御所の「中村正」さんでした。
あの勝田学院長とほぼ同年代の方です。
他のクラスは若い先生ばかりで、実は先生によって、授業内容が異なるんです。
さて、中村先生の授業内容。

それは。

た だ ひ た す ら 「 ご ん ぎ つ ね 」 を 朗 読 す る 。
こ れ だ け で す(爆)

そう、あの小学校の国語の教科書に出てくる、有名な著・新美南吉の児童文学です。

入学時に購入する教材(本)がありまして、その中にこの作品(朗読)が入っているんですね。
この本の中には、俳優に大事な心得やノウハウなども、細かく丁寧に書かれています。
一番最初の授業では、先生がこれを声に出して読んでくださり、一通り大事なことを教えて
くださったのですが、あとはぜーーーーんぶ「ごんぎつね」の朗読(笑)
(※ 途中、気分転換を図るためなのか何なのか、詩をちょこっとだけ読みました。しかも群読)

私のクラスは20人くらいいたのですが、毎回一人づつ、端から順番にごんぎつねを読んで
リレーしていくのです。
ごくたまに先生がアドバイスをしてくださるのですが、先生は決して生徒を否定しません。
良いところを指摘して自覚させ、それを伸ばすように指導する。

ここが、勝田声優学院とは真逆なところ。
あそこだったら必ずダメを出されるであろうパターンなのに
そこから無理にでも良いところを見つけ出す。
「そうくるならこうした方がいいんじゃない?」と、具体的な指示を出してくれる。

ちなみに、読み方がイマイチな生徒に対しては何も言わずに、次の人を促しました。
なんとも分かりやすい(笑)
言い方は悪いですが、一定の基準に達していない者にはもはや何も言うことはない
という意味なのでしょう。
もしくは、ただ単に面倒くさいと思っていらっしゃったのか(笑)
それが伝わったのか、そのイマイチな生徒たちは
「絶対、先生にアドバイスを貰えるようになってみせる!」と意気込んでいました。

そして先生は、ごくごくたまーに、授業中に船を漕いでいらっしゃいました(笑)
ぇ逆…じゃね…??(; ゚д゚) (←生徒が船漕ぐのなら分かるけどw)
とか思いつつも生徒の方は「いっちょ自分の朗読で起こしてやろう!」と意気込む。
まぁ今思えば、お仕事で疲れていらしたのでしょう。
そんな面白場面に遭遇することも多々あり、表面はユルイけれども実は厳しい
俳協ボイスアクターズスタジオの養成所の日々が過ぎていったのでした。

(※勝田声優学院では、自分のダメなところを知り、俳協では、自分の良いところを知りました。両方を勉強することができたのは、とても良かったと思います。)

ちなみに他のクラスでは、うちとは全然違う授業内容が展開されていたことを
しばらくたってから知りました。

他のクラスでは、自己紹介やセリフ読み・ナレーション等のスキルアップを中心に展開されていたようで、しかも、それぞれの生徒に自分に合ったもの(セリフorナレーションor朗読etc…)をそれぞれ用意させ、生徒の良さを最大限に引き出す手助けをしてくれていたそうです。

そう。
それは全て、半年後の進級試験に臨むためのものだったのです。
半年後の試験では、次の半年間の養成機関に上がれるかどうかの査定が行われます。
その査定で、自分がどれだけ即戦力になれるかということを示さなければなりません。
他のクラスの生徒たちは、かなり早い段階でそれを知っていました。
私達も、半年後に試験があること自体は承知してはいましたが、その試験に受かりやすくなる為の
ノウハウなどは、一切教えられていませんでした。

他クラスの生徒達がどんどん先を走っていく中
ただひたすらごんぎつねを読んでいた私たちの運命は…..!?

どうなる進級試験!
乞うご期待(笑)

この記事を書いたのは...

AKARI HIGUCHI
幼少期より吹き替え映画やアニメに慣れ親しみ、自然と声の世界を目指すようになる。2003年に俳協に正式所属。念願の吹き替え仕事を中心に、アニメ・ボイスオーバー・ナレーション等も幅広く手がけるように。
クールな役柄が多いが、持ち前の伸縮自在の声帯(秘技・声帯七変化)を使い、子供から大人まで老若男女、幅広いキャラクターを演じ分ける。また、ドキュメント系からバラエティ系まで、ナレーションも幅広くこなす。2011年3月よりフリーランスとして活動を開始。