AKARI HIGUCHI

2度目に通った声優養成所/新世界編【Story:6】

2度目に通った声優養成所/新世界編【Story:6】

2度目に通った声優養成所/新世界編
【Story:6】

<ナレーションと朗読>

俳協ボイスアクターズ、後半戦の授業内容は、主にナレーション・朗読・アテレコ実習の三本立てのような感じでした。
(時には、自己紹介や他己紹介、コミュニケーションゲームなども含まれたりしていました。)

面白かったのは、自分の書いた作文を他人が読む、という授業。
作文の内容(課題)については敢えて伏せますが、自分が書いたものを、他人がどのように読み取りそして想像し、どのように表現してくれるのか。
それぞれの捉え方や読み方で、内容の雰囲気も変わってきます。
自分の思った通りに表現してもらえた人、まったく違う方向で表現された人、ほんとに様々で、とっても面白かった。

これは、ナレーションや朗読などで、書いてある文章をどれだけ正確に読み取ることができるかという練習ですね。
あるいは、表現のパターンがどれだけあるのかを探る、というのもあります。

普通ならみんなが1つの課題をやるところなのでしょうけれど、みんなの作文を使って、というのが素敵な発想だと思いました(・∀・)

<アテレコ実習>

ナレーション等と平行して、洋画のアテレコ実習も行われていました。
(※ これは、私たち21期生の代から新たに加えられた授業だそうです。ラッキーでした)

現場に行ったら守らなければならないルールや、挨拶の仕方、新人の座る場所等、実際の仕事場の雰囲気についても併せて教わりました。

最初の入所試験からここまできてようやく、実際の現場についての詳細がクリアに見えてきたわけです。

アテレコ実習の詳しい内容はこれまた敢えて伏せますが、あるひとつの作品を取り上げて、2班に分けてダブルキャストで稽古していくというものでした。

アテレコを担当してくださった先生はもうほんとにほんっっとに優しくて、頭から怒ったり、感情的なダメ出しは絶対しないんですね。
ちゃんとそれぞれの良いところを最初に言ってくれて、その後で「もう少し◯ ◯するといいかもよ?」となにげなく付け加えたり。

「先生、◯ ◯君の◯ ◯(役名)、ハートがあって好きだなー(^-^)」

なんて言ってくれることもありました。
ほんと優しい。

あ、言っておきますが、実際の現場にはこんなに優しい人(演出家さん)はいません(キッパリ)。
先方はお金を払って役者(声優)を雇うわけですから、先方から要求されたことにキッチリ応えることができないといけないのは当然。
できて当然のことがもしできなければ、もう次(の仕事)はありません。

さて戻りましょうヽ(°▽、°)ノ

そのアテレコ実習には「仕上げ」がありまして、一番最後の授業で、実際のスタジオを使った本番さながらの練習日がありました。

その日には、普段からディレクターとしてお仕事をされている方が来てくださって、実際の現場と同じような感じで収録が進められていきました。

その最中、マネージャーや現役の先輩たちが、見学という名目で私たちを見にいらっしゃっていました。
それは、演出家さんのダメ出しにどれだけ的確に・そして素早く応えられるか、マイク前での動き方や、出番のない時の佇まい、周囲への気配りetc…

そんな、「この子たちは実際の現場に出ても通用するだろうか?」という観点から、色々と観察(ジャッジ)するために来てくれていたのです。

ですからこの時点で、すでに現場に出られるレベルであることが求められます。
養成所に入ってからたったの1年弱で、このレベルまで上りつめなければいけないということです。

初心者には到底無理な話しですよね(-_-;)
元から北島マヤや姫川亜弓レベルでないかぎり(笑)

<そして最終オーディション>

アテレコの授業は上記のスタジオ実習で終了となりましたが、さぁ!ついにやってきた、ほんとにほんとの最終審査です!

最終審査の課題は1人あたり3〜5分間で、自分の得意なものを披露するというものでした。要は自己PRですね。
「私は有能です!買ったら絶対役に立ちますよ!買ってください!」と市場で叩き売る。
そんなイメージ(笑)

さて、その市場で売るモノを何にするかが問題です。
はて、その売り物を何にしたらいいだろうか?
何を売れば、オーディションに受かるだろうか?

みんなそれぞれ、この先自分が仕事としてやりたいもの(ナレーション・アニメ・外画等)を題材として選んでいくのですが、そこで先生が、一緒に考えたりジャッジしたりしてくれるんですね(・∀・)/

その先生は、ナレーション&朗読を中心に教えてくれた方でした。
どの分野だったらこの子の個性が一番発揮できるか。
逆に、この子が狙わない方がいい分野は何なのか。

そういった視点から様々なアドバイスをしてくださるのですが、もちろん、自分達で内容を決めることが基本なので、頭から否定したりはしません。

「それをやりたいならこうしたらどうだろうか?」
「それを持ってくるならこう演出してみたらどうだろうか?」
と、常に生徒に寄り添った指導をしてくださいました。

さて、ここでみなさん、覚えていらっしゃいますでしょうか? 
このシリーズの第2回に書かれていた内容を。

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ちなみに他のクラスでは、うちとは全然違う授業内容が展開されていたことを、しばらくたってから知りました。
他のクラスでは、自己紹介やセリフ読み、ナレーション等のスキルアップを中心に展開されていたようで、しかも、それぞれの生徒に自分に合ったもの(セリフorナレーションor朗読etc…)をそれぞれ用意させ、生徒の良さを最大限に引き出す手助けをしていたそうです。
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はい。ここに繋がってくるんですね〜(笑) 上記の「他のクラス」の人たちはすでに、この最終試験を見越した指導を、最初から受けていたということなんです。

そんなの不公平じゃーーん!(。◕ˇε ˇ◕。) と、思われるかもしれません。
ですが、この業界は公平ではありません。不公平なんて当たり前なのです。
不公平だーなんて言ってても、なんにも始まりません。なんにも前に進みません。

それに、 どれだけ不利な状況であろうとも、努力次第でそれを覆すことは、不可能ではない のです。

さて。長くなってきましたので今回はこの辺でm(_ _)m

それでは次回、ついに最終回!
新世界編・最終回『そして現場へ. . .』 ←ドラクエw

お楽しみに!

この記事を書いたのは...

AKARI HIGUCHI
幼少期より吹き替え映画やアニメに慣れ親しみ、自然と声の世界を目指すようになる。2003年に俳協に正式所属。念願の吹き替え仕事を中心に、アニメ・ボイスオーバー・ナレーション等も幅広く手がけるように。
クールな役柄が多いが、持ち前の伸縮自在の声帯(秘技・声帯七変化)を使い、子供から大人まで老若男女、幅広いキャラクターを演じ分ける。また、ドキュメント系からバラエティ系まで、ナレーションも幅広くこなす。2011年3月よりフリーランスとして活動を開始。